人工透析の基礎知識

内シャント設置術とバスキュラーアクセス

血液透析をするには、大量の血液を体外に導き出す必要がありますが、血流を十分得ることのできる動脈は、からだの深部を流れていて穿針も止血もむずかしいのです。そこで、からだの表面に近い静脈と動脈をつなげる手術をします。これが内シャント設置術です。

シャントに続く静脈の2か所に針を刺し、ひとつから血液を導き出し、きれいになった血液をもうひとつの針からもどします。血液を取り出す箇所を、バスキュラーアクセスと言います。

人工透析の仕組み

透析治療では、体内から取り出した血液を、ダイアライザー(人工腎臓)と呼ばれる器具を通して浄化し、体内にもどします。ダイアライザーは、ストロー状に空洞な繊維のようなものが1万本程おさめられているものです。このストローには無数の小さな孔が開いています。この無数の小さな孔のあいた膜を、半透膜と言います。透析は、半透膜を利用して行います。ストローの中を通る血液が、周りに流れる透析液と同じ濃度になろうとして、不要なものは出ていき、必要なものが取り込まれることで血液を浄化します。

ダイアライザー(人工腎臓)の役割

ダイアライザーは腎臓の機能を代行するもので、無数の小さな孔の空いたストロー状の繊維のようなものが、透析液に浸されています。このストローを中空糸と言います。では中空糸を通る血液はどうやって浄化されるのでしょうか。

拡散

中空糸の表面に空いている無数の孔は、とても小さいので、血液に必要な赤血球やたんぱく質は出ていきにくいようになっています。血液中に不要な水分、電解質や老廃物は、孔を通して濃度の低いほうに移動します。この濃度の差による物質の移動を拡散と言います。

限外濾過

半透膜を介して圧力をかけると、水分が移動し、不要な水分を追い出すことができます。これを限外濾過と言います。

落ち着いた透析生活を送るためのポイント

患者さまの状態をよく知ることは、透析治療により安定した日々を送るために、患者さまご自身にとっても医師にとっても大切です。どれだけの物質を除去するか、どれだけの水分を取り除くかという条件は、患者さまおひとりおひとりによって異なります。上村内科クリニックは患者さまの状態をきめ細かく把握し、適切な透析を行います。

ドライウェイト
過剰な水分を除去したのちの、適正な体重をドライウェイトと言います。適正な体重はその時の患者さまの状態によって変わります。体重が変わらなくても、不要な水分が多すぎればドライウェイトとは言えません。むくみの有無や、横になったときに息苦しさがあるかといった症状や、血圧、心胸比、心房性ナトリウム利尿ホルモン、下大静脈系などの検査所見などから総合的に判断します。
心胸郭比
ドライウエイトを決定する際には、血圧やむくみの状態などとともに心胸郭比(CTR)も参考になる客観的な指標です。胸郭の幅に対する心臓の幅の比率が心胸郭比(CTR)です。胸部X線写真で確認します。前回検査時より大きければ体液が多すぎる可能性があり、小さければ少なすぎるという可能性があります。
浮腫
透析患者さまは、からだに不要な水分が過剰にたまってしまい、むくみが起きやすいのです。体内の水分を適切な量になるまで除去していきます。
リン・カルシウムの代謝異常
腎不全によりリンが蓄積し、カルシウムの吸収が低下すると、骨がもろくなります。カルシウムの低下は二次性の副甲状腺機能亢進症を引き起こし、血管の石灰化を起こすことにより心血管疾患のリスクが高まります。リン・カルシウム、副甲状腺ホルモンを正常に保つための食事制限、投薬が必要になってきます。
高カリウム血症
カリウムはナトリウムとともに体内の水分を調整する役目を担っています。カリウムが高くなると、手指・口のしびれ、手足の脱力感が起こり、不整脈の原因ともなります。食事療法や投薬でカリウムのコントロールを行います。
ナトリウム
塩分として知られるナトリウム。塩分をとりすぎるとのどが渇き、水分を多くとりすぎてしまいがちです。塩分の制限を行うことで、水分の量を調節し、体液量を整えることができます。
蛋白摂取量
腎臓の機能が低下している場合、老廃物を作り出す食品の摂取を制限するという考え方が必要です。リンや尿素窒素をコントロールするために、蛋白制限をしましょう。標準体重1kg当たり0.9~1.2g/日が推奨されています。外来での食事指導もございますので、ご相談ください。
水分制限と体重増加率

透析治療を受けている患者さまはほとんどの方で水分制限が必要となります。体重増加の目安は、中1日の場合はドライウェイトの3%以内、中2日の場合は5%以内に抑えるようにしましょう。体重を測定しながら水分摂取量を調整しましょう。

人工透析の費用

透析治療は、患者さまを支援する公的助成制度が確立されており、次のような制度があります。

医療保険の長期高額疾病(特定疾病)

一般の高額療養費とは異なる、高額療養費の特例として保険給付されます。透析治療の自己負担は、1か月1万円が上限となります。一定以上の所得のある方はこの限りではありません。また、重度心身障害者医療費助成金支給制度により医療費助成が受けられます(障害等級1級の方)。そのため、上限1万円は返還されることになります。

自立支援医療(更生・育成医療)

自己負担分を国の制度で助成します。自己負担分は世帯の所得により異なります。

小児慢性特定疾患治療研究事業

18歳未満(20歳まで延長可能)の患者さまはこの制度を利用できます。

臨時透析の患者さまの場合

健康保険証と特定疾病療養受領書を提示していただくことで、自己負担は上限1万円(所得により2万円)までの範囲となります。

人工透析についてお気軽にお尋ねください

人工透析は、長時間にわたる治療です。上村内科クリニックでは、患者さまの心身のご負担を少しでも軽減できるようにつとめ、安心して治療を受けていただけるように努力してまいります。ご不安なことはご遠慮なくご相談ください。
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